「ちゃんと話し合えば、わかり合えるはず」
多くの夫婦が、そう信じています。
でも実際のご相談では、「話し合うたびに関係が悪くなった」「何度話しても同じ喧嘩を繰り返してしまう」という声を、とても多く聞きます。
夫婦なのに、どうしてわかり合えないのだろう。
どうして自分の気持ちを理解してもらえないのだろう。
そんな思いを抱えている方も多いのではないでしょうか。
それは、話し合いが間違っているのではありません。
「話し合うタイミング」と「話し合う前提」が合っていないことが原因になっている場合があります。
さらに、夫婦それぞれの性格や考え方、育った環境による価値観の違いが影響していることも少なくありません。
話し合い=解決、と思っていませんか?
話し合いの場で、よく起きていることがあります。
- 何が悪かったかをはっきりさせる
- どうすればいいかを決める
- どちらが正しいかを整理する
これは一見、正しいように見えます。
でも、感情が整理されていない状態で行うと、裁判のような話し合いになってしまいます。
「あなたが悪い」
「いや、そっちだって同じでしょう」
「だから何度も言っているじゃない」
こうなると、問題を解決するための話し合いではなく、どちらが正しいかを争う時間になってしまいます。
人は責められていると感じた瞬間、相手の言葉を素直に受け止めにくくなるものです。
感情が先、言葉はあと
多くの夫婦が見落としがちなのが、感情の整理が終わっていないまま話しているという点です。
- 怒り
- 悲しみ
- 不安
- 寂しさ
これらが残ったままでは、どんな正論も届きにくくなります。
例えば、妻が夫に、「どうして私の気持ちをわかってくれないの?」と伝えたとします。
すると夫は、「わかっているよ。でも、俺だって仕事で疲れているんだよ」と答えます。
夫としては、自分の事情を説明したつもりかもしれません。
しかし妻は、「また自分のことばかり」「私の気持ちは無視された」と感じてしまうことがあります。
このような場合、妻が最初に求めていたのは、解決策や説明ではなく、気持ちを理解してもらうことだったのかもしれません。
例えば夫が、「そうか。そんなにつらかったんだね。気づかなくてごめんね」
と一度受け止めることができれば、その後の話し合いも違ってくる可能性があります。
相手の気持ちを理解しようとすることは、相手の意見をすべて認めることではありません。
まずは気持ちを受け止め、その後で自分の考えを伝えることが大切なのです。
話し合いで起きる、よくあるすれ違い
例えば、こんな構図です。
- 片方:早く解決したい・整理したい
- もう片方:まだ気持ちが追いついていない
この状態で話すと、
- 追い詰められたと感じる
- 責められている気がする
- もう話したくなくなる
結果、黙る・逃げる・反発するという行動につながります。
そして、話し合いを避けられた側は、さらに不満や不安を募らせてしまいます。
「どうして逃げるの?」
「ちゃんと向き合ってよ」
こうして、お互いが相手を理解できないまま、同じことを繰り返してしまうのです。
夫婦の性格や育った環境が話し合いに影響することも
私がカウンセリングで大切にしているのは、なぜその人が、そのような考え方や言動をするのかという背景を知ることです。
例えば、幼い頃から厳しく育てられた方は、「間違ってはいけない」「自分の考えが正しくなければならない」という意識が強くなる場合があります。
そのため、夫婦の話し合いでも、自分の意見を否定されると、強く反論してしまうことがあります。
また、家庭の中で自分の気持ちを自由に話せなかった方は、意見を求められても、うまく言葉にできないことがあります。
さらに、
「夫ならこうするべき」
「妻ならこうあるべき」
「普通はこう考えるもの」
という「〜すべき」という考え方が強いと、自分とは違う相手の考え方を受け入れにくくなることもあります。
本人にとっては当たり前の考え方でも、相手にとっては大きな負担になっているかもしれません。
こうした違いに気づかないまま話し合いを続けても、同じ衝突を繰り返してしまうことがあります。
だからこそ、表面的な言葉だけではなく、性格や考え方の特徴を理解することが大切なのです。
「話さない」は必ずしも拒否ではない
話し合いを避ける人を見ると、「向き合ってくれない」と感じるかもしれません。
でも実は、これ以上傷つかないための選択であることもあります。
気持ちが整理できていない状態で話すことは、その人にとって、とても苦しい行為なのです。
ただし、いつまでも話し合いを避けたり、無視を続けたりすることがよいわけではありません。
大切なのは、話せない理由を理解しながら、無理のない形で話し合える関係をつくっていくことです。
夫婦関係を修復するための4つの手順
では、話し合いがうまくできない夫婦は、どうすればよいのでしょうか。
① 感情的になっているときは話し合わない
怒りや悲しみが強いときは、無理に結論を出そうとしないことです。
例えば、「今はお互いに感情的になっているから、少し時間を置いてから話そう」と伝えます。
ただし、そのまま話し合いを終わらせるのではなく、いつ話すのかを決めておくことも大切です。
② 相手の気持ちを先に受け止める
話し合いでは、自分の意見を伝える前に、相手の気持ちを理解しようとする姿勢が必要です。
例えば、
妻「いつも私ばかり家事をしている気がする」
夫「俺だって仕事で疲れているんだよ」
このように反論するのではなく、
夫「そう感じていたんだね。負担が大きかったんだね」
と、まず気持ちを受け止めてみましょう。
そのうえで、
「俺も仕事で疲れている日があるから、どう分担したらいいか一緒に考えよう」
と伝えることで、対立ではなく協力するための話し合いに変えていくことができます。
③ 自分の正しさを押しつけない
夫婦は育った環境も、性格も、価値観も違います。
自分にとっての当たり前が、相手にとっても常識とは限りません。
「普通はこうでしょう」ではなく、
「私はこう思っているけれど、あなたはどう考える?」と尋ねてみることです。
夫婦関係の修復には、自分の考えを理解してもらうことだけでなく、相手の考え方を知ろうとする姿勢も必要です。
④ 一度にすべてを解決しようとしない
長年積み重なった不満を、一度の話し合いですべて解決しようとすると、かえって負担が大きくなります。
まずは一つの問題に絞り、具体的な改善方法を決めてみましょう。
例えば、家事の分担が問題なら、
「これからは夕食後の片づけをお願いできる?」
というように、実行できることから始めます。
そして、実際に取り組めたかどうかを確認していくことも大切です。
小さな改善を積み重ねることが、夫婦の信頼関係を取り戻すきっかけになります。
それでも夫婦で話し合いができないときは
頭ではわかっていても、感情が動くと、同じことを繰り返してしまう。
それは、意志が弱いからではありません。
長年、身についた考え方や感情の反応は、簡単には変えられないこともあるからです。
また、話し合いができない原因は、ご夫婦によって異なります。
相手の話を最後まで聞けない方もいれば、自分の気持ちを言葉にすることが苦手な方もいます。
自分の考えを曲げられない方もいれば、相手に合わせすぎてしまう方もいます。
そのため、一般的なコミュニケーション方法を試すだけでは、改善が難しい場合もあります。
夫婦関係の修復は、問題の原因を知ることから始まります
私は、夫婦喧嘩や話し合いができない原因を、単なるコミュニケーション不足として捉えるのではなく、性格や考え方、育った環境、価値観など、さまざまな角度から探っていきます。
なぜ相手の意見を受け入れられないのか。
なぜ感情的になってしまうのか。
なぜ同じ喧嘩を繰り返してしまうのか。
その原因を見極めることで、ご夫婦それぞれに合った具体的な改善方法をご提案しています。
「何度話し合ってもわかり合えない」
「夫婦関係を修復したいけれど、どうすればいいかわからない」
そんなお悩みを抱えている方は、一人で悩まずご相談ください。
夫婦関係を変えるために必要なのは、話し合いの回数を増やすことではなく、今までとは違う向き合い方を知ることかもしれません。
次に起きやすいこと
話し合いが続けられなくなると、次に起きやすいのが、
- 距離を取る
- 冷たくなる
- 何も言わなくなる
という行動です。
これは、必ずしも愛情がなくなったからではなく、自分の心を守るための行動であることもあります。
次回は、夫婦が心を閉ざしてしまう心理についてお話ししたいと思います。









