なぜ好きで結婚した二人が理解し合えなくなるのでしょうか?
「何度話し合っても、夫に気持ちが伝わらない」
「妻がなぜそんなことで怒るのか理解できない」
「自分は間違ったことを言っていないのに、いつも喧嘩になってしまう」
「相手が少し変わってくれれば、うまくいくのに…」
夫婦関係に悩んでいる方から、このようなお話を伺うことは少なくありません。
結婚した当初は、お互いを思いやり、理解し合えていたはずなのに、いつの間にか会話が減り、些細なことで衝突するようになってしまう。
なぜ、このようなことが起こるのでしょうか。
私はこれまで13,000件以上の夫婦問題のご相談に向き合ってきました。
その中で大切にしているのが、目の前で起きている問題だけではなく「なぜその問題が起きるのか」という根本的な原因を見つけることです。
その原因を探っていくと、夫婦それぞれの育った環境や、そこから形成されてきた性格、考え方、価値観が関係していることがあります。
今回は、育った環境が夫婦関係にどのような影響を与えるのか、そして、どうすれば夫婦がお互いを理解し、関係を改善していけるのかについてお伝えしたいと思います。
1.育った環境は性格や考え方にどのような影響を与えるのでしょうか?
私たちは、生まれたときから現在の性格や考え方をすべて持っていたわけではありません。
生まれ持った気質に加え、幼少期からの家庭環境、親のしつけ、教育、周囲の人との関わり、さまざまな成功・失敗経験によって、物事の受け止め方や行動の仕方を身につけていきます。
例えば、次のような家庭環境です。
- 厳しい父親のもとで、常に怒られないように生活してきた
- 親の言うことが絶対で、自分の意見を言えなかった
- 失敗すると叱られ、褒められることが少なかった
- 親が何でも決めてくれる環境で育った
- 家族がお互いの気持ちを伝え合い話し合う家庭だった
- 両親が頻繁に喧嘩をしている姿を見て育った
もちろん、同じ家庭で育った兄弟姉妹でも性格は異なります。
しかし、育った環境の中で身につけた考え方や感情の表し方が、大人になってからの人間関係に影響することがあるのです。
例えば、幼い頃から自分の意見を否定されてきた人は、大人になっても自分の気持ちを伝えることが苦手になる場合があります。
反対に、自分の希望がいつも優先される環境で育った人は、相手の意見に合わせることを難しく感じる場合もあります。
大切なのは、育った環境が良かった、悪かったと判断することではなく、その環境の中で、どのような考え方や行動の習慣が身につき、それが現在の夫婦関係にどう表れているのかを理解することなのです。
2.育った環境が夫婦関係に表れやすい5つの特徴
それでは、実際の夫婦関係にはどのような形で表れるのでしょうか。
①「普通はこうするべき」という考え方が強い
夫婦喧嘩の原因として、私が特に注目しているのが「MUST思考」です。
MUST思考とは、
「夫ならこうするべき」
「妻ならこうあるべき」
「普通はこうするもの」
「家族なら当然こうするでしょう」
といった、自分の中にある「こうでなければならない」という考え方です。
例えば、夫は「仕事をして家族を養うことが夫の役割」と考えている一方、妻は「夫婦なのだから家事や育児も協力するべき」と考えていたり。
どちらも、自分が育ってきた家庭や経験の中で身につけた価値観かもしれませんが、自分の考えを当たり前だと思っていると、相手の考え方を受け入れることが難しくなります。
そして、「どうしてわかってくれないの?」という不満が生まれてしまうのです。
② 自分の気持ちをうまく伝えられない
子どもの頃、自分の気持ちを話しても聞いてもらえなかったり、泣いたり怒ったりすることを否定されたりしてきた人は、感情を表現することが苦手になる場合があります。
夫婦喧嘩になったとき、黙り込んでしまう。
何を考えているのか聞かれても「別に」「何でもない」と答える。
相手からすると、無視されている、向き合ってくれないと感じるかもしれません。
しかし、本人はどう伝えればよいのかわからず、黙ってしまっている場合もあるのです。
もちろん、沈黙の理由は人によって異なります。
だからこそ、行動だけで判断せず、その背景を理解することが必要なことになります。
③ 認められたい気持ちが強くなる
幼い頃から褒められる経験が少なかったり、他人と比較されることが多かったりすると、大人になってからも「認めてもらいたい」という気持ちが強くなる場合があります。
例えば、夫婦の話し合いで相手から意見を言われただけなのに、自分を否定されたように感じてしまい、自分を守ろうとして言い返したり、間違いを認められなくなったりすることがあります。
本当は夫婦で問題を解決したいだけなのに、いつの間にか「どちらが正しいのか」という争いになってしまうのです。
④ 相手に合わせることが苦手になる
自分の意見を優先することが多かった人も、反対に、常に周囲に合わせてきた人も、夫婦関係の中で問題を抱えることがあります。
前者は、相手の意見を受け入れることに抵抗を感じる場合があり
後者は、自分の気持ちを我慢し続け、ある日突然、不満が爆発してしまうことがあります。
夫婦関係に必要なのは、一方が我慢することでも、一方の意見に従うことでもありません。
お互いの違いを理解し、譲り合える部分を見つけることなのです。
⑤ 怒り方や問題への向き合い方に違いが出る
問題が起きたとき、すぐに感情を表す人もいれば、その場から離れたくなる人もいます。
例えば、両親が怒鳴り合う家庭で育った人が、意見の違いを強い口調で伝えることに慣れている場合があります。
一方、厳しく叱られることを恐れて育った人は、相手が怒り始めると何も言えなくなる場合があります。
この二人が夫婦になったらどうでしょうか。
一方は「ちゃんと話して」と追いかけ、もう一方は「これ以上責められたくない」と逃げようとします。
こうして、お互いの反応がさらに相手の不満や不安を強めてしまうことがあるのです。
ただし、育った環境が理由であっても、怒鳴る、脅す、暴力を振るうといった行為が許されるわけではありません。
原因を理解することと、問題のある行動を正当化することは別なのです。
3.なぜ夫婦は自分の考えを譲れなくなるのでしょうか?
夫婦は、もともと違う家庭で育った他人同士です。
それぞれが異なる環境で、異なる価値観を身につけてきました。
ところが結婚すると、相手も自分と同じように考えてくれるはずだと期待してしまうことがあります。
「言わなくてもわかるはず」
「普通はそんなことをしない」
「自分だったらこうするのに」
このような思いが強くなると、相手の立場や考え方を理解する前に、自分の正しさを主張してしまいます。
また、相手の意見を受け入れることを「自分が負けた」「自分が間違っていた」と感じる人もいます。
しかし、夫婦関係は勝ち負けではありません。
相手の考えを理解することは、自分の考えを否定することではないのです。
私はカウンセリングの中で、「なぜそこまで自分の考えにこだわるのか」「なぜ相手の意見を受け入れることが難しいのか」という部分も大切にしています。
その背景がわかることで、今まで気づかなかった問題の原因が見えてくる場合があるからです。
4.育った環境が違う夫婦は、どうすれば理解し合えるのでしょうか?
では、すでに性格や価値観が形成された大人同士でも、夫婦関係を改善することはできるのでしょうか。
私は、改善できる部分は十分にあると考えています。
ただし、長年身につけてきた考え方や行動の習慣は、簡単には変わらないこともあります。
そのため、次のような取り組みが大切になります。
① 自分の考え方の特徴を知る
まずは、自分がどのような考え方をしやすいのかを理解することです。
「私は正しさにこだわりやすい」
「相手から注意されると否定されたように感じる」
「自分の気持ちを伝えることが苦手」
こうした特徴に気づくことが、改善への第一歩になります。
② 相手がなぜそのように考えるのかを理解する
相手の言動を「性格が悪い」「思いやりがない」と決めつける前に、なぜそのような反応をするのかを考えてみましょう。
相手の育った環境や過去の経験を知ることで、これまで理解できなかった言動の背景が見えてくる場合があります。
③ 自分の正しさを押しつけない
「私はこう思うけれど、あなたはどう考える?」
このように、お互いの意見を確認する習慣をつくることが大切です。
相手と考えが違っても、すぐに否定せず、まずは最後まで聞いてみる。
そして、二人にとって無理のない方法を一緒に考えていきましょう。
④ 理解するだけで終わらず、行動を変える
ここが非常に重要です。
「自分はこういう家庭で育ったから仕方がない」
「こういう性格だから変われない」
それでは、夫婦関係はなかなか改善しません。
例えば、感情的になりやすい人であれば、怒りを感じたときに一度会話を中断し、落ち着いてから話す練習をする。
相手の意見を否定しやすい人であれば、まずは「そう考えているんだね」と受け止める練習をする。
自分の気持ちを伝えることが苦手な人であれば、短い言葉からでも伝える練習をする。
このように、原因を理解したうえで、具体的な行動を少しずつ変えていくことが必要なのです。
5.私が夫婦カウンセリングで大切にしていること
夫婦問題のご相談では、「夫が悪いのでしょうか」「妻が間違っているのでしょうか」と聞かれることが多くあります。
しかし、私は最初からどちらか一方が悪いと決めつけるのではなく、なぜ現在の問題が起きているのかを丁寧に見ていきます。
そのため、カウンセリングでは、現在起きている問題だけでなく、お一人おひとりの性格や考え方、育ってきた環境、夫婦それぞれの受け止め方なども確認していきます。
例えば、同じように夫婦喧嘩を繰り返しているご夫婦でも、原因が同じとは決して限りません。
自分の正しさにこだわることが原因になっている場合もあれば、気持ちをうまく伝えられないことや、相手の言葉を否定的に受け止めてしまうことが関係している場合もあります。
また、育った環境だけではなく、発達特性や現在のストレス、心身の状態などが影響している可能性も考える必要があります。
だからこそ、すべてのご夫婦に同じアドバイスをすることはできないのです。
私は、そのご夫婦がなぜ今の状態になってしまったのかを一緒に考え、何を改善すれば関係が変わっていくのかを具体的にお伝えすることを大切にし、一度のカウンセリングでも、ご自身や相手の考え方の特徴、問題の背景に気づいていただけるよう、真剣に向き合っています。
そして、原因を知って終わりではなく、日常生活の中で何を変えていけばよいのかまでお話をさせていただいています。
まとめ|夫婦関係を変えるためには、まず「なぜ」を知ることから
夫婦関係がうまくいかないとき、私たちはどうしても相手の言動ばかりに目が向いてしまいます。
「どうしてわかってくれないの?」
「どうして変わってくれないの?」
「どうして同じことを繰り返すの?」
しかし、その答えは、目の前の出来事だけを見ていても見つからないことがあります。
お互いがどのような環境で育ち、どのような価値観を身につけ、なぜそのように考え、行動するのか。
そこを理解することで、今まで見えなかった問題の原因が明らかになることがあります。
育った環境を変えることはできません。
しかし、育った環境の中で身につけた考え方や行動の習慣は、気づきと取り組みによって変えていくことができます。
もし今、夫婦の会話がかみ合わない、喧嘩ばかりしてしまう、相手の気持ちが理解できないと悩んでいるのであれば、一度、その問題の背景に目を向けてみませんか?
自分たちだけでは気づけなかった原因が見つかるかもしれません。
夫婦問題カウンセラーとして、これまでの経験をもとに、お一人おひとり、そしてご夫婦それぞれの特徴に合わせて、改善への道筋を一緒に考えていきたいと思っています。
夫婦関係を改善する第一歩は、相手を変えようとすることではなく、お互いを理解することから始まります。
夫婦関係にお悩みの方は、どうぞ一人で抱え込まずにご相談ください。
カテゴリー: 夫婦問題カウンセラーのコラム
タグ:カウンセリング, 夫婦問題, 夫婦問題改善, 家族関係改善

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